麻雀における「強さ」の検証(前編)


一般に麻雀において、直接対決を充分な試合数行った結果、「対戦成績がよい方のプレイヤー(=勝者)が敗者より強い」と本当に言い切れるかどうか、簡単に検証してみたい。
これは、04年末に「旧・日記」において述べようとしたことを理論的に説明するとともに、では「理論上の最強のプレイヤーはどういう打ち方をするのか」というテーマにつながっていくものである。

たとえば、ジャンケンでもよいのだが、少しだけ手を加えて、次のようなゲームを行うとする。
自分が異種格闘チームの監督だとして、ライバル団体と試合を行うことになった。
問題の都合上、「古武術」「柔術」「空手」の3種の格闘技の選手だけを選抜するとする。選手はみんな同程度の力量の持ち主だが、競技(というか武道)の性質上、異種の競技に対して得意・不得意があるとする。
下の表は、自分と相手がどの競技の選手を選ぶか、によって、対戦結果の「自分の」予想勝率を示したものだ。
つまり、古武術>柔術、空手>古武術、柔術>空手・・・という感じだ。
(「>」は数式の記号としてではなく、イメージとして使っている。以下も同様)


  古武術  柔術  空手 (自分)
古武術 50% 40% 60%
柔術 60% 50% 40%
空手 40% 60% 50%
(相手)


この時、「長期的に勝率を最高にすること」を目的として試合を行う。

ちなみに、この時点では「必勝法」は存在せず、相手がどのような手を打つか分からない場合には、(この場合なら)とりあえず古武術・柔術・空手の選手を均 等に出場させるべきなのは、「基本的な戦略と特定の相手に対する戦略」で述べた通りである。(※1)。
ここで、仮に100チームが参加して充分な試合数のリーグ戦を行うとき、その中の特定の3チームが古武術・柔術・空手の選手を出場させる割合が、それぞれ

自分)7:2:1
猪木)2:1:7
高田)1:7:2

とし、「自チームを含めた」参加100チーム全体では

平均)1:1:1

であるとすると、結局「同じ実力(=この場合『平均R』)のチーム」であっても、直接対決では結果に大きな差が出ることがある(※2)。

言いかえれば、実力の低いプレイヤーであっても、実力の高いプレイヤーとの直接対決では、長期においても勝ち越すことはあり得るということだ。東風荘でいえば、低R者が高R者に勝ち越すこと(以下、「紛れ=まぎれ」とする)は、理論的にも充分考えられるのだ(※3)。

東風荘などでは、理論的にはRが高くなるほど「まぎれ」が起こる可能性は低くなる。自分の打ち方が理想的な打ち方、いわゆる「均衡点」に近づいていくからだ。それ以前のムダな打ち方が多い段階では、お互いのプレイヤーの打ち方が変にかみ合ってしまえば、経験上このような「まぎれ」はかなりひんぱんに起こり得る。

本稿の内容に初めて気付いたのは、データを取り始めた当初、どう見ても自分よりは「平均R」でかなり劣るプレイヤーとの対戦で、大幅に負け越していたこと を知ったときだ。当時でもおそらく(数百試合単位で)「平均R」で2100にかなり近い成績を残していたと思う。それでも、当時の打ち方は技術的にかなり の欠陥を抱えており、その結果、特定の打ち方をするプレイヤーとは相性が悪かったのだ。

皆さんも、「自分の方が彼よりもRが高い」「いや、自分の方が直接対決で勝ち越している」などと、東風荘のライバルとしのぎを削っていることがあるかも知 れない。それらはどちらも正しいことはあり得るし、それだけに目先の勝負にこだわることなく、淡々と「平均R」を2100→2200→・・・と伸ばしてい き、ぜひ「真の実力」を手にされることを願って止まない。



(※1)「自分が」古武術・柔術・空手の選手を出場させる割合をそれぞれ a、b、c
「相手が」古武術・柔術・空手の選手を出場させる割合をそれぞれ a"、b"、c" とすると、結局

X=a(b"-c")+b(c"-a")+c(a"-b")

で表されるXについて、
X>0 の時、自分のチームが勝者となり、X=0 で引分け、X<0 の時に敗者となる。
また、勝率を最高にするためには、Xの数値を最大にするように行動すればよい。


(※2)この場合、ごくごくわずかな誤差はあるのだが、「対戦相手99チームの平均」もほぼ1:1:1となるため、上の式でいえば

a"≒b"≒c"≒1/3

となり、「参加100チームがほとんど同じ実力」(=勝率5割に限りなく近づく)となる。
ただし、この3チーム同士の対戦では、

猪木>自分、自分>高田、高田>猪木

となり、それぞれ 0.531の勝率で勝ち越すことになる。


(※3)上の例では、「対戦相手の99チームの平均」が「1:1:1」ではなく、高田チームの割合である「1:7:2」であるとすれば分かるであろう。明らかに高Rの自分が、低Rの猪木に負け越してしまうことになる。
「対戦相手のプレイヤーの平均」が(ここまで極端でなくとも)偏った結果になるのは、複雑な対戦ゲームにおいては決して珍しくはない。この場合、「柔術が 強い」「古武術は弱い」という間違った思い込みなどでこのような結果になったと思われる。東風サンマにおいても、ほとんどのプレイヤーが、安手や手が整っ ていない状況からでも役ハイを1鳴きすることなどは、「その方が平均得点
が高くなる」という間違った思い込みからの行動であろう。


(参考)「まぎれ」がおこらないケース


どのような状況においても「まぎれ」が起こらないようなゲームなどは、実際にはほとんど存在しな い(囲碁や将棋などにも「まぎれ」が存在する)。あったとしても、比較的簡単に攻略法が発見されて、上級者同士なら「すべて引分け」という、つまらない結 果になってしまうだろう。

「まぎれ」が起こらないためには、「対戦相手のプレイヤーの平均」の打ち方を限定しない限り、次のような要件を満たしたゲームでなければならない。

〔設例〕1〜10までの数字が書かれたカード10枚がそれぞれ与えられ、自分と相手で同時に1枚づつカードを出す。1回勝負で「より大きな数字のカードを出した方が勝ち(同じ数字なら次のカードで決する)」の場合、必勝法は

「大きい数字のカードから順番に出していく」

であろう。こうすれば、最悪でも引分けに持ち込むことができ、自分の負けはなくなる。

このようなゲームの場合であれば、「対戦相手のプレイヤーの平均」がどのような打ち方であっても、長期においては高R者は必ず低R者に勝ち越すことができ、「まぎれ」は起こらない。
ただ、実際問題このようなゲームであれば、すぐに飽きてしまうであろう。


あとがきと次回予告


以上、「麻雀における強さ」について簡単に述べてきたが、では「最強の打ち手」とは、どのような戦略をもって対局に臨むのであろうか。分類の仕方にもよる だろうが、4つほどの「強さの段階・種類」があると自分は思っている。それらは、次回の更新でUPさせていただくことにする。

なお、今回は実生活の知り合いの方と食事中に、「麻雀の強さの比較は、ある程度客観的に示すことができる」みたいなことを話し、「どんなものか知りたい」 となったため、急遽UPさせてもらった。もちろん、後編で詳しく述べるが、従来からいわれてきているような「強さ」を否定しているわけではなく、むしろ 「それはこのような意味で強い」ということを、自分なりの解釈で考えているつもりだ。

なお、「ベトナム旅行記」の続編「傘がない!」「渡行」(いずれも仮題)については、何しろご覧のようにツメが甘い性格なもので、コラム「免許がない!」の(Vol.2)以降も含めて、アントニ・ガウディのサグラダ・ファミリアとどちらが先に完成するのか、みなさんも長生きして見守っていただければ幸甚だ。

では、また!

(↑この欄は実友のために加筆。後編UP時には削除します)


追記


以前もそうだったが、ここまでの講座をUPした後に、改めてとつげき東北氏の最新講座を読んでみた。今回の講座もそうだが、以前の記述についても、さすがに疑問点が出てきたので、ここでお断りしておきたい。

1)自分の平均Rについて

氏によると、

サンマの安定R=3600−1800A+他家平均R

であり、平均順位A=1.80、他家平均R1940とすると、何と「2300」になってしまう。
この式が正しいとすると、やはり現実的にありえないような数字になってしまう。データとして記録に残っているものについては、試合数も少ないことだし、平 均順位はもう少し高くなっていく可能性が高い。これが平均順位1.85とすると、他家平均Rにもよるだろうが、平均Rが2200をこえる数値となり、感覚 的には充分に可能な数字ではないかと思っている。

いずれにせよ、少ない試合数での記録だけに、あくまで推測の域を出ないものであることを、改めてお断りしておきたい。

2)麻雀における「強さ」の比較について

すでに講座でも述べたが、サンマは4人打ちに比べて、実力が成績に反映されやすく、それゆえ「まぎれ」も生じやすい(というか、「まぎれ」による対戦成績 の差が大きくなりやすい)。氏の論文では、安定Rが50違うことは、ネットやリアルの違いなどでは逆転できないほどの大きな差であると論じている。だが、 これはサンマと4人打ちの違いも当然あるだろう。
具体的なデータがないだけに苦しいのだが、サンマでは4人打ち以上に、平均Rが相当程度違っても、互いの実力や打ち方によっては「まぎれ」が生じることもあり得ると思っている。

また、氏の「強さ」に関する論文なども読ませてもらったが、「後編」に記す内容は、氏とは多少違った見解になると思う。もちろん共通している部分もかなりあるので、予めご了承いただきたい。

3)この講座の瑕疵

この講座では、対戦ゲームの本質を解明することを心がけており、その結果、「このようになる『はず』だ」「予測ではこうなる」ということを述べている。事実、文中にもこれらの表現が散見されるであろう。
だが、旧・日記において述べたように、これらはそもそも「仮説」にしかすぎない。「事実」こそが重要であり、本来これらの「仮説」を充分な試合数打ち込む ことや、(自分には到底できないが)コンピュータによるシュミレーションを行うなどで、「検証」しなければならない。
おそらくは、「理論」と「現実」には誤差があるであろうし、この講座に書かれていることが最終的な結論であると断ずる気持ちなどは全くない。そのことをご了承の上、今後さらにセオリーを発展させる人の登場を待ちたい。